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2009.10.16(Fri)

【その男、副署長】第1話 感想

File.1 河原町署の屋上を訪れた京都府警本部長は、なぜスーツ姿のまま射殺されてしまったのか?

ゲスト:宅麻伸、森本レオ、今村恵子、吉岡扶敏、山本紀彦、坂西良太

監督:猪原達三
脚本:櫻井武晴


すみませんでした。

『副署長』シリーズは木8枠の中で1番期待値が低いシリーズな上、今回の脚本書いた櫻井さんの話は、科捜研では微妙なのが多かったので、実は少しマイナス方面から見てたんですが。
それを吹き飛ばす、『副署長』シリーズとしても警察ドラマとしても秀作でした。
勿論、脚本だけの力じゃなく、演技も演出もよかった。
なんていうかベタ褒めが過ぎるかもしれませんが、それぐらいよかったということで。
前日の『相棒』SPと比べるのはナンセンスですが、あっちよりよっぽどちゃんと金もかかってるし、話もすっきりまとまってるしキャラやシリーズとしてのストーリーにも動きが出たし。
ありえないとわかっちゃいるが、もし万が一、今期いっぱいこのクオリティを保ってくれるなら、毎週木曜夜8時はテレビの前に正座して見る。そんな微かな期待をしてしまいました。
うん、不安だったけど、この分なら『相棒』と『副署長』を掛け持ちしても大丈夫……ですよね?
いつもならグダグダとあらすじ追ったり小ネタ拾ったりするんだけど、今回はとにかく褒めまくろうと思います。

どうしてこのクオリティを科捜研で出さなかった!とかいう恨み言はさておき。



【ついき】




◆今回は冤罪がテーマ。時事ネタに最速で食らいつく、櫻井さんの得意分野ですな。
枠間違えたんじゃねーのってくらいの暗さと重たさがクセになりそうだ。いや実際、このクオリティだったら、水9枠でも行けたかなぁと。
冤罪と時効による被害者・加害者家族双方の苦しみ、警察の責任の負い方を書いた手腕はさすがとしか言いようがない。
この話での1番の被害者、杉原にとっては何の救いもない話。
19年間冤罪で逮捕・服役し、釈放されてみれば今度は妹の由美子が逮捕。しかも原因は自分が冤罪だったことが、滝沢によって知らされたから。
しかも兄の自白を引き出したのは、警察の執拗な取調べではなく実は周りからの誹謗中傷に耐え切れなくなった妹の言葉、ってところで涙腺が決壊した。うわぁぁぁぁぁぁぁやめてやってくれぇぇぇぇぇぇぇ
作中では杉原本人の言葉や描写はなかったけど、あったらこの重さが軽減しそうなんでいいや。この救いようの無さ、『京都迷宮案内』とタメ張れるわなぁ。
気になったのは、由美子の拳銃入手ルートがちと投げやりだったかなぁ、ってことぐらい。一応、伏線はあったが。


◆とにもかくにも、森本レオが素晴らしい。
『トリック』の再放送とか見てても思ったけど、さすがの一言。特に「撃て!」からの流れは圧巻。
20年前、ひとりの男を冤罪に追い込んでしまった苦しみを抱く元刑事。重たい話を、その演技力でしっかり引き締めてくれました。
そんな滝沢さんは、拳銃で腹を撃たれながらも、監視カメラを避けながら車運転したり街中さまよったり、精神力が本当にハンパないな。それだけ、贖罪のための覚悟が凄まじかったということなんだろうが、ちょっと超人過ぎやしないかね。そこは気になった。
あんな鬼気迫る感じの男が、拳銃持って血まみれでフラついてたら、それは怖いわなぁ。


◆よく批判されてた船越の暑苦しさも、話の重さで大分中和されていた感じ。安易に泣ける人情路線へ走るより、今回の話の方がよっぽど泣けたなあ……この路線でいったらどうかね。書ける人、あまりいないだろうけど。
……過去再現シーンの、今村さんの無理が過ぎる女子高生服姿は、お約束とはいえ大分泣けました。別の意味で。……いや、お綺麗でしたけど。


◆やたら副署長の立場に対するフラグが立っていた件。
近藤さんの台詞、池永自身の葛藤、「お義姉さんも許してくれると思うよ」、ラストの黛の台詞……
OPで、『制服を脱ぎ捨てる』から、『かけられた制服を手に取る』に変わったのも象徴的。
『副署長が制服を脱ぎ捨て、犯人に自首を促す』っていうのは、このシリーズのコンセプトでもあり、同時に矛盾でもあるんだよな。「なら、何故現場復帰をしないのか」という。
現場復帰しないのは「『人の痛みがわかる警察』を目指すなら、副署長って職も悪くない」というのと、亡くなった妻と残された娘のため、なんだけど、池永は自らの職務を放棄してるのが大半だし(少なくともそう見えてしまう描写)、娘のはるかはむしろ、池永がやりたいようにやればいいと思っている。もちろん、妹の佳子も。結局現状は、池永の自己満足と甘えになっているんだよな。そこを問題にしたのは、結構シリーズの根底に関わるんじゃなかろうか。
今期でシリーズ終了も有り得るかなと思った。これを上手く処理、消化できたらすごいが、同時に『相棒』の『黙示録』みたいなことになりそうでもあり不安。アレも櫻井さんが伏線張ってたが、ワヤにされちゃったし。


◆島の「人を恨んでもいい。幸せより、まずは生きることが大切」って意見は、個人的には賛成です。行動に移さなければ思うことは自由なわけだし、唯一の被害者家族である彼は、たとえ不毛とわかっていても、「恨み」という拠り所がなければ生きていけないんだろう。
島は池永の綺麗事では解決できない部分を、上手く処理していた。締めであるラストの記事もなかなか。池永と島の微妙な関係、勝ち負けの問題ではないにせよ、今回は島の勝ちという感じでしたね。
今回の島の良さは異常。物語のジョーカー的存在だから結構扱いが難しいと思うんだけど、彼を上手く扱える話はシーズン1ラストといい、良作。


◆新キャラは横浜東署の二ノ宮ぁー
……ではなく、京都府警捜査一課長という偉い人、な宅麻伸。どうやら準レギュラーかつ重要な役どころなようで(公式キャスト一覧に名前が)。サブタイ『京都河原町署事件ファイル』が消えたのも、今まで河原町署だけで話が回っていた閉じられた世界観から、京都府警にも舞台が広がったことを意味しているのだろうし。
で、その宅麻と船越が並ぶと濃いな……毎回並ばれると胃もたれしそうだ。
黛は単純な味方ではなさそう。『相棒』で言うところのラムネポジだと思うんで、毎回は出て来ないだろうが。今度出てくるのはいつだろう。
「正々堂々現場に戻ってこい」とか屋上でのやり取りとか、ラストの「俺の後釜は池永」発言とか、池永がちゃんと副署長したら、って仮定の未来の姿って感じですかね。彼もまたクセのあるキャラのようだから、上手く扱ってほしいところ。


◆と、京都府警本部をも巻き込んだ重たい話の中でも、銃声聞いてお茶を派手にこぼしたり相変わらずの副署長の暴走に愚痴こぼして振り回されたり、近藤警務課長がホッと一息入れてくれる存在であってくれて何よりです。

◆いくら監視カメラ設置の予算がないとはいえ、河原町署のセキュリティがザルなのは確か。さすがにあんなオープンな非常階段に、一個も監視カメラないのはマズいだろう。

◆あまり出てないのに、副署長の娘、はるかがウザくて可愛いげないのは相変わらずでした。これは何が原因なんだろう。見た目? 言動? 演技?
今回は署長ジュニア、出なかったなぁ。出る余地も必要も、全くなかったけど。

◆由美子を取材した女性リポーターの空気の読め無さは、確実に降板ものだなと思った。

◆20年前の真犯人、落合は実質、逃げ得だな。
送検容疑は婦女暴行未遂、しかも一応初犯。ぶっちゃけ大した罪にはならんだろう。ただし、社会復帰はできそうにもないが。

◆今回は2回あった、副署長の『我慢の限界』。でもあまり見せ場って感じではなかった。話の方向が重かったから、これで正解だとは思うが。

◆科捜研がスルーだったのは、京都府警の科捜研連中は頼まれもしないのに暴走して犯人引きずり出したりする、超優秀な軍団なので都合が悪かったからだと信じてます。
まぁ少なくとも、府警本部の外観を見る限り、『科捜研の女』とはパラレルワールドのようだが。
木8枠で一斉コラボとかやらねぇかなぁ、と常々思っている身としては、ちょっと残念w

◆キーになった犬のマスコット、あまり20年前って感じしないな。しかも売り切れる程人気が出るとは思えない、とかいうのは野暮か。
20年前に、雑貨も置いてる薬局あったっけか? っていうのも、野暮か。うん。

◆番組最後の視聴者プレゼントは、誰得。今回の台本は読みたいがサインはいらねぇ。



おそらく次回以降は内容的にガクっと落ちそうだが、それでもこの張られた伏線消化に期待します。
何か視聴率は悪かったようだが私には関係ない。とにかく、今回は文句のつけようがない名作。櫻井脚本とベテラン俳優たちの底力を見せていただきました、さすがです。
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